世界を変える方法を一行で説明するとしたら?

  <はじまりの物語>

大昔、みんなが神様を信じていた頃、人間の欲望は罪でした。

「貧しくても清く正しく生きれば天国に行けますよ。」
「お金儲けばかりしている欲張りは死んだら地獄行きですよ!」

まだ宗教が強い影響力を持っていた時代です。
子供達は学校で「清貧は善」「強欲は悪」こう教えられていました。

だからみんなに嫌われる悪役の定番はお金持ちの商人。
シェイクスピアの「ヴェニスの商人」に登場するシャイロックがその代表です。
日本だと時代劇に出てくる悪代官とお金持ち商人が悪役ですね。

ところが1776年アダム・スミスの「国富論」が出版されました。
みんなが金儲けを頑張れば世界は良くなるという夢物語が書いてある本です。
みんなが自己の利益を追求すれば、「神の見えざる手」によって経済はすべて上手くゆく。
これは天と地がひっくり返ったようなコペルニクス的発想でした。


つまり「強欲=悪」ではなく「強欲=善」だという今までと全く正反対の主張です。

お金持ちの商人達は大喜びでこの話にとびつきました。
聖書の代わりにこの本を世界中に広めよう!
これで堂々と胸を張ってお金儲けができるようになる。
もう牧師さんやお坊さんの言うことを聞かなくてもいい。

 

彼らは「神の見えざる手」という強欲の免罪符(許可証)を手に入れたのです。

そして資本主義という社会の仕組みが生まれました。


「お金儲けは正義!」


資本主義では人間の欲望を正当化してしまったのです。
18世紀、自由競争の新しい時代が始まりました。

21世紀の現在、この自由競争ゲームの結果は出たようです。
「大富豪8人の資産と、貧しい36億人分の資産額は同じ」
この先も格差は開き続けるでしょう。
神の「見えざる手」は幻想に過ぎませんでした。
飢餓、貧困、紛争、差別‥‥
世界は病んでいます。
「広がりすぎた格差社会」この病は今も進行中です。


 <無限の欲望>


200年以上におよぶ壮大な社会実験は失敗に終わりました。
失敗の原因ははっきりしています。
「人間の欲望」を甘くみてしまったせいです。
確かに人間の欲望を正当化することによって社会は発展し、文明は進歩しました。
しかし人間の欲望には限りがありません。

「起きて半畳、寝て一畳。天下取っても二合半。所詮人間そんなもの」
人間の際限のない物欲を戒める言葉です。

昔の織田信長や徳川家康の生活を想像してみて下さい。
お城の天守閣に住んでいれば景色はいいでしょう。
でも水道も電気も通っていません。テレビ、水洗トイレ、クーラー、何もありません。
夜は暗く、夏は暑く、冬は寒い、厳しい生活です。
病気になれば病院も薬もありません。
平均寿命は現在の半分ぐらいでした。
虫歯が原因で死んでしまう人も大勢いたようです。

今の私達はみんなが昔の殿様より何十倍も快適な生活を楽しんでいます。
車、飛行機、コンビニ、インターネット、世界中の料理、旅行、スイーツ‥‥
でもみんなもっと欲しい物がたくさんあるようです。
このように「人間の欲望」には限りがありません。
 
本来、欲望は満たされ満足することを望みません。
欲望はがん細胞のように無限に増殖することを望みます。
当然、ブレーキがなければ暴走してゆきます。
これは宿主(社会)が壊れるまで続くでしょう。
「無限の欲望」による行き過ぎた自由競争ゲームの勝者と敗者。

稼げる人間はどんどん儲けて贅沢をする。
稼げない人間は飢え死にしてしまう。

これが資本主義の行き過ぎた格差社会の現実です。
お金持ちの豪邸とホームレスの段ボールハウスを見比べれば一目瞭然。
「広がりすぎた格差社会」
この病気の原因ウイルスは人間の「無限の強欲」です。

「すべての悪の根源は?     What is the root of all evil? 」
「強欲がすべての悪の根源です。 Greed is the root of all evil 」

「世界を救う治療方法は?」     病名:広がりすぎた格差社会    原因:無限の強欲」ウイルス

病気の治療には対症治療と原因療法の2種類があります。
 対症療法:  症状を抑えるための一時的な治療法。
 原因療法:  病気の原因を根本的に取除く治療法。

 @対症治療
まず最優先で敗者の救済策が必要でしょう。
現在、自由競争の下限、最低限の生活保護、社会保障のセーフティーネット‥‥

最近ではベーシックインカムゲインなども議論されているようです。
(これは政府 が国民全員に生活に必要な分だけのお金を支給するというものです。)
しかしこれらは一時的な応急処置にすぎません。


問題の根本は自由競争の下限ラインではありません。

問題の根本は自由競争の上限ラインがないことです。


最大の失敗は「無限の欲望」に上限ライン(ブレーキ)が初期設定されていなかったことです。

 A原因療法
原因は人間の本質である「無限の欲望」ウイルスです。
もっと欲しい、もっと欲しい、
1億円、10億円、100億円、1000億円‥‥いくらあってもまだ足りない‥‥
とうとう個人資産が1兆円を超える時代になってしまいました。
マイクロソフト社のビル・ゲイツはなんと資産10兆円!
超お金持ちセレブ(スーパーリッチ)の誕生です。
豪邸、別荘、スーパーカー、自家用ジェット、ブランド物、宝石で着飾る贅沢な生活。
まるで王様のようで羨ましいですね。
しかし世界では1日1ドル以下で生活している貧困層が12億人。
1日2ドル以下で生活している貧困層が30億人。
世界中で1日に4万人が餓死しています。

みんがお金儲けの自由競争をすれば世界は良くなるはずでしたが‥‥
「神の見える手」は上手く機能していないようです。
残念ですが賞味期限切れでしょう。

2011年には、ニューヨークで「ウォール街を占拠せよ!」というデモが起こりました。
"We are the 99%(私たちは99%だ)"というスローガンで1%お金持ちに対し

「反格差」「反大企業本位主義」を訴える運動です。
これは世界中に広がってゆきました。
このままでは「お金持ち=かっこいいセレブ」というイメージが悪くなってしまいます。
大昔のお金持ちが悪役の時代に逆戻りです。
困ったお金持ち達は寄付やトリクルダウン理論などで誤魔化そうとしましたがイメージアップは難しいようです。

ただ最近、新しい免罪符を見つけたようです。
よくIT長者が口にする「世界を変える」という言葉です。
本当に「世界を変える仕事」で世界が良くなれば素晴らしいことだと思います。
しかしほとんどのIT企業は基本的に「世界を(ちょっと便利に)変える」ビジネスにすぎません。


キッチンのアイデア便利グッズを売って儲けるのと同じ仕組みです。
PC、スマホ、タブレット、アプリ‥‥30年前は無くても地球は回っていました。
むしろITビジネスの普及で格差は加速度的に悪化しています。

「コンピューターは人を便利にしたが幸せにはしていない。」by 原田泳幸

ただ、本気で世界を良くしようと頑張っている若者も大勢います。
この先、本当に「世界を(より良く)変える」イノベーション(革新)が起こることを期待しましょう。

「世界を変える仕事」
「神の見えざる手」

どちらも格差社会の治療効果は無いようです。
今のままでは世界は良くならないでしょう。
しかしお金持ちが悪いわけではありません。
彼らは資本主義のルールに従って行動しているだけです。
頑張って勉強して仕事して努力して成功して、結果としてお金が儲かったら悪者扱い。
これではあまりに気の毒です。

もしあなたが宝くじで1兆円当たったらどうしますか?
「お金はそんなに沢山いらない!10億円あれば十分だから99.9%ユニセフに寄付します!」
とは多分ならないでしょう。
無限の欲望を自制心でコントロールできる人間はほとんどいません。
現実には100%の善人、100%の悪人はいません。
人間はみんなその中間です。
他人を批判して腹を立てる資格のある善人が何人いるでしょうか?

「人を指さす前に、自分の手が汚れていないのかよく見てみろよ」 by ボブ・マーリー

マザーテレサのことはみんな知っているはずです。
彼女が亡くなった時、財産は着替え一枚だったそうです。
あなたは真似できますか?
自分はそれほど善人ではないと自覚すれば、もう少し他人にも優しくなれるはずです。

格差の原因はお金持ちではありません。
これは資本主義の根本的な仕組みの問題です。
最初に資本主義が生まれた時から、結果がこうなるのは必然でした。
「21世紀の資本論」を読めば分かります。
19世紀、マルクスの「資本論」でも資本主義経済の危険性は指摘されていました。
「資本主義経済の下では格差社会と独占を生む。」

この本を読んで自由競争はダメだねって思った人達が違う仕組みを考えました。
計画的に経済をまわして、みんなが平等で豊かな暮らしができるようにしよう!
世界で最初の社会主義国の誕生です。
レーニンは革命によってソビエト社会主義共和国連邦という国を打ち立てました。
毛沢東は社会主義国家である中華人民共和国を建国。
しかし社会主義もあまり上手くいかなかったようです。
平等で競争のない国では、頑張った人も、怠けていた人も給料はずっと一緒です。
これでは怠ける人が増えて豊かな国になれませんよね。


社会主義は平等な社会、資本主義は自由競争の社会を選択しました。
どちらも偏り過ぎて失敗したようです。

「自由に競争すれば結果、平等ではなくなる。」
「平等を押しつければ結果、自由ではなくなる。」

「自由と平等」の矛盾です。

「自由と平等」はトレードオフ、どちらかが大きくなればどちらかが小さくなります。
しかし自由と平等はどちらも大切です。

自由と平等のバランスを上手く保つ為にはどうすれば良いでのしょう?

病名「広がりすぎた格差社会」の原因は「無限の強欲ウイルス」でした。

ただ「人間の欲望=悪」ではありません。
人間の欲望は上手く使えば社会の発展、文明の進歩に役立ちます。
人間の欲望を無理に抑えつけると社会主義のようにみんなやる気をなくしてしまいます。
ほとんどの人間は聖人君子ではありません。
ご褒美がなければ働けないというのは分かります。
頑張った人間にはそれなりの報酬があるのは当然でしょう。
ある程度の自由競争は認める必要があります。
しかし自由と平等のバランスを保つ為には自由競争の範囲を設定する必要があります。
つまり欲望の上限を決める。

Greed Limit Line(欲望の上限ライン)を引くこと。
これが世界を変える最も有効な最初の一歩です。

「道徳を忘れた経済は罪悪であり、経済を忘れた道徳は寝言である。」
有名な二宮尊徳(金次郎)の言葉です。

人間の無限の欲望を制御しなければ世界を変えることは不可能です。
しかし「無限の欲望」は道徳の授業や宗教だけでは制御できません。
人の心はそんなに強くありません。

もちろん科学技術で人間の心を変えることもできないでしょう。
世界を変えるのは技術的なイノベーションではありません。
産業革命、IT革命‥‥結局、人間の本質は何も変わっていません。

現在、「無限の欲望」は無制限のスピードで暴走しています。
強欲のハンドルとアクセルは人間が操作しています。
強欲のスピード違反はルールで規制する必要があるでしょう。

例えば、高速道路の制限速度を10キロ下げる。
交通ルールを1行書き換えればすぐに実現可能です。
世界を変えるにはルールそのものを変えるのが一番効果的です。
 
行き過ぎた格差は良くない。
この基本原則を守るために、金融ゲームのルール(行動規範)を変える。
しかも予算は0円。
目に見えないライン(Greed Limit Line)を一本引くだけで実現可能です。

法律は「その社会においてもっとも普遍的な社会的コンセンサス」であるはずです。

「国の最大の役割は富の再配分です。」


日本では所得税 累進課税率の最高税率は1986年まで70%でした、しかし1999年に37%まで引き下げられました。
つまりお金持ちの税金は半分近くまで引き下げられました。
政治家とお金持ちがグルになって自分達が得をするように法律を書き換えているようです。
格差を広げる法律改正です。
富の再配分という観点からすると間違っていますね。
お金持ちの税率を下げるのではなく上げるべきです。
アメリカはもっとひどいようです。

<米国の著名な投資家ウォーレン・バフェット氏>
自分の税金が秘書の約半分というのはおかしい。
富裕層向け増税策、通称「バフェット税」を提唱しました。

志と義のあるお金持ち、政治家も少数ですが存在するようです。

自由と平等のバランスを取るためには自由競争の範囲設定が最も有効です。
自由競争の勝者と敗者、その上限と下限を決める。

下限は年収200万円。 それ以下はセーフティネットで救済。
上限は年収10億円。 それ以上の収入は税率100%。
年収200万円〜年収10億円は累進課税
年収10億円あれば累進課税70%でも3億円残ります。

どんな大家族でも月2500万円あれば十分暮らせるでしょう。
だからお金儲けの為だけに働いている人間は年収10億以上の仕事をする必要はありません。
利益第一主義のビジネスや企業は成長しない方が良いですね。
これ以上、ブラック企業が大きくなるのは迷惑です。
本当に世の中を良くしたいという志と義のある人間には関係のない話です。

「大切なのは大金を稼ぐことではなく、世界を変えること」 by スティーブ・ジョブズ

本気で社会貢献の為に働いている人は収入に上限があっても仕事を続けるでしょう。
自由と平等のバランスを保ち、金と権力の一極集中を分散させるには遺産相続、キャピタル・ゲイン、雑所得、所得収入‥‥

すべて含めて上限年収10億まで!

Greed Limit Line(欲望の上限ライン)を設定すれば金と権力は分散されます。
理想の世界を邪魔する現実の壁(金と権力)はかなり薄く低くなるでしょう。


ルール(法律)を変える。
これが費用対効果、時間対効果の面で最も優れた治療方法です。
一番安く、早く、簡単な解決方法でしょう。

格差を大きくすることも、小さくすることも簡単にできます。

子供達に「勉強するのはお金儲けをする為」と教える社会。
子供達に「勉強するのは世の中を良くする為」と教える社会。
どちらが良いと思いますか?

  平成23年度 日本のお金持ち年収データでは
  年収1億円以上 約10000人 (就労者5520人に1人:0.018%)
  年収10億円以上 約250人
  年収100億円以上 2人

Greed Limit Line法案を国民投票すれば反対するのは0.01%以下でしょう。
税率を上げるとお金持ちが海外に移住してしまうという意見がありますが数百人程度がいなくなっても全く困りません。
移住したいお金持ちには海外で塀に囲まれた武装ガードマン付きの豪邸生活を楽しんでもらえばいいでしょう。
G.L.L運動(Greed Limit Line)が世界中に拡散すれば逃げる国もなくなってゆきます。

私はもしお金持ちになっても格差のない安全な国に暮らせるメリットを捨ててまで移住しようとは思いません。


世界を変える方法を一行で説明するとしたら?

強欲の上限ライン(Greed Limit Line)GLL法案を作ればいい。

これが一番シンプルな方法です。




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